Fumihito Ohashi Architecture Studio

-Triangolo トリアンゴロ SHIZUOKA , SHIZUOKA , JAPAN2025.10
『トリアンゴロとは』

「三角」を意味するイタリア語、triangolo。
"お店・生産者・お客様" の三者をとりもつ三角形を大切にしたいという話を店主から聞いた。さまざまな三つの関係について、設計する上でもバランスを意識して進めた。

エントランスの小さなお店のロゴ、背後ににぶく光る三角形。
三連の自然石の連なるオブジェのようなペンダントライト。
テーブル天板の割れを防ぐ三つの契り。
光のグラデーションのようなファサードの窓も3枚のガラスがワンセットとなり、光の量を増していく。
無垢の巨大なカウンターは三分割。
店名の由来から始まったストーリーはやがて細部へと伝播しかたちをつくっていった。


『ねじれた無垢のカウンター』

初めて訪れた店内で、
「この無垢のカウンターが気に入って、この物件にしようと決めたのです。」
店主は丁寧に説明してくれた。続けて、「新しい店内でもこのカウンターは残したい、のですが、カウンターの一部はねじれていて今は客席として使えないのです。どうですかね?再利用できますでしょうか?」と問われた。分厚い木製の無垢のカウンターは確かに左右で大きくねじれていて、とても癖ありな存在だった。

ねじれた部分を切り落とし、水平にしようとすると厚さは30ミリほどしか残らないことがわかった。大工とともに試行錯誤を重ね、4.3mもの長さを一度分割し、部分ごとにねじれを補正し、再度繋ぎ合わせる。という案が思い浮かんだ。接合部はより家具的に仕上がるように10ミリほどの端材を挟み込んで再構築した。
全面研磨されたカウンターは、白木の美しさが映える別物の存在になった。
こうしてカウンターは厚さを確保しつつ、新たな空間の顔となるべく店内中央に鎮座している。


『居場所ごとの空間感、素材感』

カウンター席では天井を木製格子にすることで抜け感をうみ、ひろがりを感じられるようにしたのに対して、テーブル席は天井高さを下げて篭れる場とした。
ワンルームの空間にカウンター席とテーブル席が同居しながら、居場所のあり方の違いでどちらの場も座って食事したい魅力を持たせたかった。

テーブル席周辺はさまざまな素材が混ざり合う交点。
中でもちいさな面積ながらもこの空間を引き締める役割として、和紙の壁の存在はとても意義がある。
席の背後は白。その横の壁柱のようなかたまり部分は柿渋の赤褐色。この壁の手前には色や素材の要素が入り乱れているのだが、和紙のやさしい素材感が背面として受け止めるのにふさわしい仕上げとなった。


『やさしい光が降りそそぐ窓、日々変化するファサード』

自然光を心地よく取り入れると同時に周辺の風景に対してどのように接するか考えたいという思いは、今回の外観を決めていく上で店主と私がともに気になる点であった。
間口が広くはない外壁面、細い幅の木を連続させて一つの面をつくり、端部から段々と隙間が広がっていく、光と影にリズムがある表情の窓にした。
繊細さのある立面の表現は店主の細やかでひろがりのある料理から想像したもの。

また、屋外では改修前からトリアンゴロの畑で採れた野菜の販売をしていた。彩のある店先の表情はお店に食べに来るお客さまだけでなく、通りかかる通行人にも興味を引く要素である。
改修後も同様に店先で野菜を並べて販売してもらうことを想定して、立面である木材と同じ表情で仕上げた野菜棚が高さを違えて連なるように仕上げた。季節や天候などにより、野菜の収穫量は変化する。店先に並ぶ野菜の量も彩りも時々で変わるからこそ、野菜置き場のボリュームも変化して使えるようにした。棚に段差を設けて、日々ファサードが変化する店先はとても楽しげである。
所 在 地 静岡市葵区新通
用  途 店舗 | 飲食店(イタリア料理店)
施工面積 27.9㎡
階  数 五階建|施工は1階部分のみ
構  造 RC造
種  別 改修
施  工 野沢工務店
設計監理 FOAS大橋史人建築設計
竣  工 2025年10月